「CRMを入れたいが、補助金が使えると聞いた。うちは対象なのか」——福岡の中小企業の経営者から、投資判断の場面でよくいただく質問です。答えは「使える可能性が高いが、制度が毎年変わるため、いま何が募集中かの確認が先」です。本記事では、福岡県内の中小企業が営業DX・CRM導入・Webサイト改善に使える補助金を、国・県・市の3層で整理します。当社は補助金の申請支援を実務として行っており(直近2年でZoho関連10件以上を申請し採択率75%以上・2026年度は5件採択済み)、その経験に基づく「申請前に知っておくべき注意点」まで含めて解説します。制度情報は2026年10月9日時点の確認内容です。必ず各公式サイトで最新の公募状況をご確認ください。
福岡の中小企業が使える補助金は何がありますか?(3層の全体地図)
営業DX・CRM導入に使える制度は、次の3層で考えると整理できます。
| 層 | 制度(2026年度) | 補助上限・補助率の目安 | 状況(2026-10-09時点) |
|---|---|---|---|
| 国 | デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金) | 通常枠 最大450万円・1/2(条件により2/3)/インボイス枠 最大350万円・3/4 | 受付中の6次締切 2026年10月30日 17:00(7次以降は日程未発表・5次までは締切済み) |
| 福岡県 | 中小企業生産性向上・賃上げ緊急支援補助金 | 小規模200〜225万円/大規模2,000〜2,250万円・2/3〜3/4 | 1〜6次とも受付終了(6次は2026年8月17日正午締切)・次回の公募は未発表(公式サイトで要確認) |
| 福岡県 | 中小企業経営革新・賃上げ緊急支援補助金 | 上限120〜135万円・2/3〜3/4(システム導入費も対象) | 受付終了・次回の公募は未発表(公式サイトで要確認) |
| 北九州市 | 地域中核企業等成長促進トライアル補助金 | 10万〜250万円・1/2(販路開拓・マーケティング等) | 受付終了(2026年8月7日締切・8月27日採択決定)・次回の公募は未発表 |
| 北九州市 | FAIS DX推進補助金/生産性向上支援助成金 | 最大500万円・2/3/DX強化枠200万円・1/2 | いずれも令和8年度の受付は終了(2026年5月29日締切)。生産性向上支援助成金の一般枠・中東情勢枠(上限各100万円・1/2)は12月4日まで受付(予算到達次第終了) |
| 福岡市 | 独自のDX補助金は設けられていない | — | 国・県の制度を活用する |
ポイントは2つです。第一に、主軸は国の制度であり、県・市の制度は上乗せまたは補完の位置づけです。第二に、どの制度も年度制・審査制のため、「使えるかどうか」は制度の有無ではなく「いま募集中か・自社が要件を満たすか」で決まります。2026年10月9日時点では、県・北九州市の主要制度は令和8年度の受付を終えており、営業DX・CRM導入でいま申請できる主な窓口は国の6次(10/30)です。
国の「デジタル化・AI導入補助金」はどう変わりましたか?
2026年度(令和8年度)から、長く続いた「IT導入補助金」は「デジタル化・AI導入補助金」に名称変更され、単なるITツール導入からAI活用・業務変革を重視する制度に再設計されました。営業DX・CRM導入との関係で押さえるべき点は次の通りです。
- 通常枠: 補助額は対象業務プロセス数1〜3で5万〜150万円、4以上で150万〜450万円。補助率は1/2以内(地域別最低賃金未満で雇用していた従業員が一定割合以上いる等の条件を満たす場合は2/3以内)。一般的なCRM導入はこの枠が中心です。
- インボイス枠(インボイス対応類型): ITツール最大350万円・中小企業は補助率3/4以内。会計・受発注まで含む統合型の導入で使われます。
- 賃上げ要件の厳格化: 2022〜2025年度に一度でも交付決定を受けた事業者が再申請する場合、給与支給総額の成長率など賃上げ関連の要件が課され、未達の場合は返還リスクがあります。過去に採択歴のある会社は要注意です。
- 2026年度スケジュール: 交付申請は2026年3月30日に開始され、締切は1次5月12日/2次6月15日/3次7月21日/4次8月25日(いずれも17:00・締切済み)/5次は9月末に締切済み。2026年10月9日時点で受付中の6次の締切は、10月30日(交付決定12月10日予定、17:00)です。7次以降の日程は未発表です。10月9日には、第7次公募回以降の制度変更(通常枠の補助率引き上げ要件の変更、1人当たり給与支給総額の申請要件の追加など)が案内されました。締切直前はシステムが混み合うため、余裕を持った準備をおすすめします。
最新のスケジュール・要領は公式サイト(IT導入補助金ポータル)で必ず確認してください。
CRM導入では何が補助対象になりますか?
見落とされがちですが、補助対象はツールのライセンス費だけではありません。IT導入支援事業者側が役務をツールとして登録していれば、導入コンサルティング・要件定義・初期設定・データ移行・操作研修といった役務費も補助対象に含められます。クラウド利用料は最大2年分が対象になり得ます。
CRM導入の総費用は「ライセンス費・構築費・定着支援費」の3層で構成され、中小企業では構築だけで50〜300万円程度かかるのが実情です(内訳の詳細はCRM導入の費用相場と内訳で解説しています)。補助対象を役務費まで広げて設計できるかどうかで、実質負担は大きく変わります。見積もりを取る際は、補助対象/対象外の内訳が分かる形で出してもらってください。
福岡県・福岡市・北九州市の独自支援はありますか?
福岡県は、賃上げと連動した支援制度を複数設けています。代表的なのが中小企業生産性向上・賃上げ緊急支援補助金(令和7年12月補正分)で、1次〜6次の募集が行われ、6次(2026年8月17日正午必着)をもって受付は終了しています。次回の公募は未発表です(公式サイトで要確認)。事業場内最低賃金を30円以上引き上げることを条件に、補助率2/3(賃上げ60円以上なら3/4)、上限は小規模支援で200〜225万円・大規模支援で2,000〜2,250万円。対象経費にソフトウェアの購入・改良費やクラウドサービス利用料が明記されており、CRM導入にも使える設計です。なお申請には「福岡県中小企業”稼ぐ力”応援センター」の支援を受けていることが要件で、同センターが作成する支援計画には2〜3か月程度かかると案内されています。センターへの支援申込みは補助金のスケジュールに関わらず随時受け付けられているため、次回の公募を待つ間に相談を始めておくのが実務上のポイントです。このほか、経営革新計画の承認を条件とする中小企業経営革新・賃上げ緊急支援補助金(上限120〜135万円)もありましたが、こちらも受付を終了しています(次回の公募は未発表)。「賃上げとセットならDX投資が手厚く支援される」のが福岡県の一貫した設計思想です。
北九州市は市独自の支援が手厚い自治体です。地域中核企業等成長促進トライアル補助金は、令和8年度は2026年7月6日〜8月7日に募集され、受付は終了しています(8月27日に採択企業を決定)。市内に本社または支社を持つ企業が対象(売上高等の要件あり)で、補助率1/2・下限10万円〜上限250万円。対象経費は新商品・新サービス開発のためのマーケティング、展示会出展、市場調査、人材採用など「成長に向けた新たな取組」で、CRMそのものより、販路開拓・マーケティング投資に使いやすい制度です。次回の公募は未発表のため、来年度に向けて計画を温めておく位置づけになります。また、北九州産業学術推進機構(FAIS)の「DX推進補助金」は市内中小企業に最大500万円・補助率2/3という規模です(令和8年度の受付は2026年5月29日で終了・9月18日に採択企業一覧を公表済み。次回公募はFAIS公式で要確認)。別途、生産性向上支援助成金のDX強化枠(上限200万円・1/2)も5月29日で募集を終えています。同助成金の一般枠(上限100万円・1/2)は2026年12月4日まで受付中(予算額に達し次第終了)ですが、粗利が基準期間比10%以上減少していることが要件のため、対象となる会社は限られます。7月に新設された中東情勢枠(上限100万円・1/2)も12月4日まで受付中ですが、中東情勢の影響を受けていることと粗利の減少が要件で、対象経費は原油由来製品の代替などです。北九州の会社は、国・県・市の三にらみで計画するのが定石です。
福岡市については、市独自の「DX補助金」と呼べる制度は設けられていません(2026年10月9日時点・当社確認)。福岡市内の会社は、国のデジタル化・AI導入補助金と上記の福岡県の制度を主軸に組み立てることになります。
補助金を使う前に確認すべきことは?(3つのガードレール)
申請支援の実務で、必ず最初にお伝えしている注意点が3つあります。
- 審査制であり、採択は保証されない。 全体の採択率はおおむね40〜60%で推移しており、どれだけ準備しても落ちることはあります。
- 交付決定前の契約・着手はNG。 決定前に発注した費用は対象外です。「先に導入して後から申請」はできません。
- 後払いのため、立て替えが必要。 入金は実績報告の後です。キャッシュフロー上、一時的に全額を負担できることが前提になります。
そして最も重要なのは、補助金ありきで投資判断をしないことです。補助金で安く導入できても、定着しなければ運用費と現場の時間だけが失われ、結果的に最も高くつきます。当社が立て直しを支援した会社の多くは「導入費用は掛けたが定着設計がなかった」ケースでした。導入を成功させる手順そのものは福岡でCRM導入・営業DXを進める手順と営業DXの進め方で解説しています。
宮村の見解: 「補助金は『やるべき投資の背中を押すもの』であって、『やるかどうかを決めるもの』ではありません。採択率75%の実績があっても、私たちは補助金前提の計画をおすすめしません。落ちても実行する価値のある計画だけが、通ったときにも成功します」— 宮村佳祐(株式会社etika代表取締役)
申請から受給までの流れは?(4ステップ)
国のデジタル化・AI導入補助金を例にすると、流れは次の4ステップです。
- IT導入支援事業者・ツールの選定: 導入したいツールが登録済みか、支援会社がIT導入支援事業者かを確認し、共同で事業計画を作ります。
- 交付申請: gBizIDプライムの取得(数週間かかるため最初に着手)、賃上げ計画等の要件整理、申請マイページでの提出。
- 交付決定 → 契約・導入・支払い: 決定通知の後に初めて契約・導入します。
- 実績報告 → 補助金入金: 導入・支払いの証憑を報告し、確定検査を経て入金されます。
自社がどの制度を使えそうか、そもそも補助金を使うべき投資かどうかから整理したい場合は、無料相談で現在の状況を伺い、投資の優先順位から一緒に整理します。なお、Zoho製品での申請実務(枠別の対応・登録ツールの詳細)は、当社のZoho専門サイトCRMサポートセンターで継続的に解説しています。
まとめ — 制度は3層、判断は「補助金がなくてもやるか」
福岡の中小企業が営業DX・CRM導入で使える補助金は、国のデジタル化・AI導入補助金を主軸に、福岡県の賃上げ連動型、北九州市の独自制度という3層で整理できます。2026年10月9日時点では、北九州市トライアル(8月7日)・福岡県6次(8月17日正午)はすでに受付を終えており、いま申請できる主な窓口は国の6次(10月30日)です。7次以降の日程は未発表です。県・市の制度の次回公募は未発表のため、各公式サイトで最新情報をご確認ください。慌てて要件に合わない申請をするより、次の公募に向けて定着まで見据えた導入計画を作るほうが結果的に得です。
補助金を使うかどうかの前に、そもそも自社の営業管理のどこに投資すべきか。無料相談で現在地の整理からお手伝いします。福岡・北九州での支援体制は地域サポートページをご覧ください。
よくある質問
補助金の採択率はどのくらいですか?
国のデジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)の全体採択率はおおむね40〜60%で推移してきました(年度・枠により変動)。当社が支援したZoho関連の申請では、直近2年で10件以上を申請し採択率75%以上、2026年度はすでに5件が採択されています。ただし審査制である以上、どんな支援者がついても採択の保証はできません。
交付決定前に契約・発注するとどうなりますか?
その費用は補助対象外になります。補助金は「交付決定→契約・導入→実績報告→入金」の順序が厳格で、先に始めてから申請することはできません。導入を急ぐ案件と補助金活用は両立しないことがあるため、スケジュールを先に確認してください。
CRMのクラウド利用料は何年分まで補助されますか?
国の制度ではクラウド利用料は最大2年分が補助対象になり得ます(枠・年度により条件が異なります)。ライセンス費だけでなく、導入支援・設定・データ移行・研修といった役務費も対象になり得るため、見積もりの内訳を補助対象/対象外で分けて確認することが重要です。
ZohoやkintoneなどのCRMは補助対象になりますか?
対象になり得ます。補助対象は「IT導入支援事業者として登録された事業者が提供する、登録済みITツール」であることが条件のため、導入したいツールと支援会社が登録済みかを最初に確認してください。Zoho製品の枠別の対応関係や申請実務は、当社のZoho専門サイト(CRMサポートセンター)で詳しく解説しています。
申請は自社だけでできますか?
制度上、申請主体は導入企業自身ですが、IT導入支援事業者と共同で申請する仕組みのため、実務では支援会社と二人三脚で進めます。当社は要件確認・事業計画の整合・書類整理を伴走支援しますが、採択をお約束することはできません。

