Wappalyzerとは、Webサイトがどんな技術で作られているか(CMS、計測ツール、広告タグなど)を調べるツールです。ブラウザの拡張機能などで使え、営業の前に相手のサイトを確かめる用途にも使えます(Wappalyzer公式サイト)。Wappalyzerが中心に見るのは、Webサイトに現れる技術です。公式の技術一覧には「Email」の分類もあり、受信の基盤などが分かる場合もあります。一方で、メール配信やMAの送信をどこから行っているかは、DNSのSPF・DKIM・CNAMEに送信側の痕跡として残ります。当社は、この送信側の痕跡を別に確かめるために、公開DNSのレコードを調べました。当社(株式会社etika)は、CRMにある見込み客のドメイン約2,200件をこの方法で調べ、営業の優先順位づけに使いました。この記事では、何が分かって何が分からないか、確度の序列、誤検出の避け方、営業での使い方を説明します。

なぜ営業の前に、相手のメール基盤やMAを調べるのか

目的は、相手の環境に合わない提案を避けることです。

たとえば、すでにMAを運用している会社に「まずメール配信を始めましょう」と提案しても響きません。逆に、メールは社員の個人アドレスから送っているだけの会社に、MAの高度な使い方を話しても前提が合いません。CRMやMAを使っているかどうかで、話すべき内容が変わります。

当社では、見込み客をS/A/B/Cの4段階に分けて、配信の文面を変え、Sは個別に追っています。「すでにマーケに予算を割いているか」は、その判定材料のひとつです。分け方はリードスコアリングを点数でなくS/A/B/Cの4段階でに書きました。

Wappalyzerで分かること、DNSで分かること

調べられる範囲を整理すると、次のようになります。

調べたいものサイトに現れる技術を見るツール(Wappalyzerなど)公開DNS
CMS・サイトの作り主な対象分からない
計測・広告のタグ(GA4、Google広告、Metaなど)主な対象分からない
MA・チャットのタグ設置されたページを開けば出る一部分かる(送信側の設定)
メールの受信基盤(Google Workspace、Microsoft 365など)ツールや版によって出ることがあるMXで分かる
メール配信・MAの送信側の設定主な対象ではないため、別に確かめるSPF・DKIM・CNAMEで推定できる
社内だけで使うCRMサイトにタグが無ければ見えにくいメール送信の設定があれば一部推定できる

両者は競合する手段ではなく、主に見ている場所が違います。サイトに現れる技術はサイトの側、SPF・DKIM・CNAMEはメールの送信の側です。両方を合わせると取りこぼしが減ります。Wappalyzerで何がどこまで分かるかは、版や設定によって変わるため、公式の技術一覧で確かめてください。

DNSで見る4つのレコード

  • MX:メールを受け取るサーバー。Google Workspaceなら Google が案内する名前(Google Workspace の MX レコードを設定する)、Microsoft 365なら mail.protection.outlook.com で終わる名前になる
  • SPF:そのドメインの名前でメールを送ってよいサービスの一覧。TXTレコードに include: で書かれる
  • DKIM:送信メールの電子署名の鍵。サービスごとに決まった名前(セレクタ)で置かれることが多い
  • CNAME:別名の設定。メール配信やMAのサービスでは、go. info. em1. のようなサブドメインに、サービス側の名前を向ける設定がよく使われる

確度の序列:受信の基盤とMAの利用を分けて読む

DNSの手がかりは、どれも同じ重みではありません。また、「受信の基盤が何か」と「MA・メール配信を使っているか」は、別々の確度として扱います。

受信の基盤は、MXで判断します。受信の基盤は今使っていないと業務が止まるので、MXに出ていれば確度は高いと扱います。ただし、MXから分かるのは受信の基盤だけです。MXの確度が高くても、MAを使っているかどうかの確度が上がるわけではありません。

MA・メール配信の利用は、次の序列で扱っています。

確度手がかり理由
最も高いDKIMやトラッキング用のCNAMEの向き先実際に運用していないと設定しない
中そのサービス専用のSPF特定性は高いが、解約後の残骸がある
低汎用の送信基盤のSPF、ドメイン確認用のTXT「使っている可能性がある」まで

MA・配信の痕跡の判定は、実際には次のように付けました。

  • 「高」:CNAMEの向き先がサービスと一致したとき。専用のSPFのうち、そのMAの送信にしか使われない名前(当社の判定表で個別に指定したもの)が直接書かれているときも「高」に数えた
  • 「中」:それ以外の専用のSPFや、DKIMのセレクタ名の一致だけのとき
  • 「低」:汎用のSPFや確認用のTXTだけのとき

SPFは、include: の先をさらにたどると、別のサービスの名前が出てきます。当社は、レコードに直接書かれた文字列だけで判定し、たどった先で見つかったものは「低」に固定しました。たどった先まで数えると、関係のないサービスまで「使っている」ことになりやすいためです。

誤検出を避ける3つのルール

当社が実際に調べる中で決めたルールです。

1. SPFの残骸を、今の利用と読まない

SPFは「送ってよい」という許可の一覧です。解約しても、消す理由がないので残りがちです。制作会社がテンプレートで入れている場合や、問い合わせフォームの通知のためだけに許可している場合もあります。SPFだけで「このMAを使っている」とは判断しません。

2. 短い文字列で照合しない

サイトのタグを調べるとき、ma や aw- のような短い断片で探すと、関係のない文字列に当たります。当社は、サービスの公式ドメインの文字列と、IDの形式や初期化の呼び出しの2つが揃ったときだけ「設置を確認」としました。HTMLのコメントは先に取り除きます。コメントアウトされた古いタグに当たるのを防ぐためです。

3. GTMのコンテナだけで、MAやチャットを判定しない

Googleタグマネージャー(GTM)を使っているサイトでは、コンテナのJavaScriptを読むと、下層ページだけに置かれたタグも見つかります。当社の最初の集計でも、タグの検出の約3割はこの方法で見つかりました(MA・チャットをGTMの判定から外す前の数字を含みます)。

ただし、コンテナにはタグのテンプレートの定義も含まれます。MAやチャットはこの定義に当たって誤検出が多かったため、GTMのコンテナだけで見つかったMA・チャットは判定から外しました。広告と計測のタグは、コンテナからの検出も採用しています。

「見つからない」は「使っていない」ではない

この方法には、原理的に見えないものがあります。当社が調べた範囲では、次のようなものです。

  • 通知メールを、サービス側の固定の送信元から出すツール(相手のDNSに痕跡が残らない)
  • 顧客ごとに個別のIPで送る方式のメール配信サービス(SPFに共通の include: が出ない)
  • 中継の構成をとるメール送信や、第三者の署名で送るMA
  • 国産MAのタグで、GTM経由の設置が主になっているもの(サイトのHTMLに直接は出てこない)

そのため、CRMには「未検出」と書き、「使っていない」とは書きません。空欄を「シロ」と読まないことが大切です。

当社で実際に調べた結果

2026年8月17日に、CRMの見込み客・取引先・連絡先の全件を対象に調べました。フリーメールのドメインは除いています。

調べたもの対象結果
DNS2,218ドメインCRM・MAの痕跡:確度「高」399、「中」61
メールの受信基盤(MX)同上Google 734、Microsoft 365 452、Xserver 155、Zoho 41
サイトのタグ738サイト到達できたのは91%。広告のタグを確認できたのは167サイト
レコード単位にまとめた結果CRMCRM・MAの痕跡あり:見込み客731件、取引先22件、連絡先191件

上の3行はドメインやサイトの単位で数えた数字です。最下行は、DNSの結果とサイトのタグの結果(MA・CRMのタグを確認できた104サイトを含む)を合わせ、CRMのレコード単位で数え直したものです。同じドメインの人が複数のレコードにいるため、件数はドメイン数(「高」「中」で460)より多くなります。個々の会社の判定結果は、ここには載せません。

人が承認した行だけ、CRMに書き戻す

調べた結果は、自動でCRMに書き込みません。レビュー用の画面で、確度・根拠(見つかった文字列やCNAMEの向き先)・調査日を人が見て、承認した行だけを書き戻します。確度が「高」でも同じです。

CRMには、判定の値と一緒に、確度・根拠・調査日をセットで持たせました。SPFの残骸や解約したタグがあるので、半年ごとに調べ直して上書きする想定です。

調べるときのマナー

  • 読むのは公開DNSと公開Webページだけ。ログインが必要な場所には触れない
  • Webは同じサイトに1秒以上の間隔を空け、robots.txt に従い、名乗ったうえで取得する
  • 1サイトあたり数ページまで

営業での使い方

調べた結果は、営業リストの優先順位と、話の切り口に使います。

  1. 優先順位:CRM・MAの痕跡が「高」「中」、または広告タグがある会社は、すでにマーケに予算を割いている可能性が高い。当社では、見込み客のランクをAに上げる材料にしている
  2. 切り口:たとえば受信がMicrosoft 365で、Zohoの送信の痕跡がある会社なら、「メール配信とCRMのつなぎ方」の話から入れる。痕跡がない会社には、配信の始め方から話す
  3. 言い方:「◯◯を導入していますね」と断定しない。「サイトでは◯◯のタグの設置を確認しました」までにとどめる。違っていたら、すぐに訂正できる言い方にしておく

自社でやるときのチェックリスト

  • 目的を「相手に合わない提案を避ける」と決めている
  • サイトのタグとDNSの両方を見ている
  • MA・配信の利用の確度の序列を決めている(CNAME先>専用のSPF>汎用のSPF)。受信の基盤はMXで別に読む
  • SPFは直接書かれた文字列だけで判定している
  • 短い文字列だけで照合していない。HTMLのコメントを除いている
  • GTMのコンテナだけで見つかったMA・チャットを、判定に使っていない
  • 「未検出」と「使っていない」を分けて記録している
  • 確度・根拠・調査日をCRMに一緒に残している
  • 書き戻しの前に人が確認している
  • 営業の場で断定しない

ツールを増やすほど成果が遠のく「部分最適」の落とし穴はMAツール・CRM導入が失敗する理由で、マーケの運用をAIで回す全体の設計はAIマーケティングハーネスとはで説明しています。見込み客の調べ方から配信・架電までの流れを組み立てたい場合は、受注プロセス管理のページからご相談ください。

よくある質問

Wappalyzerで相手のMAツールは分かりますか?

サイトにMAのタグが読み込まれていれば、分かることがあります。ただし、MAのタグが資料請求やお問い合わせなどの下層ページだけに置かれている場合や、メール配信だけに使っている場合は、トップページを見ても出てこないことがあります。メールの送信側の設定はDNSに出るので、あわせて確認すると取りこぼしが減ります。

MXレコードは、どうやって確認しますか?

Macやパソコンのターミナルで dig コマンドを使うと確認できます。たとえば dig MX 相手のドメイン と打つと、メールを受け取るサーバーの名前が返ってきます。Google Workspace や Microsoft 365 など、受信の基盤ごとに決まった名前があるので、そこから推定します。

SPFに書いてあるサービスは、今も使っていると考えてよいですか?

そうとは限りません。SPFは送信を許可するサービスの一覧で、解約したあとも消されずに残ることがよくあります。制作会社がテンプレートで入れている場合や、フォームの通知のためだけに許可している場合もあります。SPFだけで判断せず、CNAMEやMXなどほかの手がかりと一致するかを見てください。

相手のDNSを調べるのは、問題ありませんか?

DNSのレコードは、メールを届けるために誰でも引ける形で公開されている情報です。当社は公開DNSと公開Webページの読み取りだけに限り、Webはアクセスの間隔を空け、robots.txtに従い、名乗ったうえで取得しています。結果は社内の判断材料にとどめ、相手に「あなたの会社は◯◯を使っていますね」と断定して伝えることはしません。

何も検出されなかった会社は、MAを使っていないと考えてよいですか?

考えないでください。当社の調べた範囲では、通知を固定の送信元から出すサービスや、顧客ごとに個別のIPで送るメール配信サービスは、相手のDNSに痕跡が残りません。「未検出」と「使っていない」は分けて扱います。

宮村佳祐

この記事の著者: 宮村 佳祐(株式会社etika 代表取締役)BtoBメディアとMAツール「リストファインダー」の立ち上げ・事業拡大を経て、ニッチな強みを持つBtoB中小企業の売れる仕組みづくりを支援。プロフィール詳細 →