展示会のお礼メールとは、ブースで名刺交換した相手に、来場のお礼と話した内容の振り返り、次の一歩の提案を送るメールです。大事なのは早さと中身です。ただ、展示会から戻ると名刺が数十枚あり、通常の業務も溜まっています。お礼メールは「明日書こう」が続き、気づけば1週間たっている。そんな経験がある方も多いと思います。

当社(株式会社etika)は、2026年10月7〜9日の「2026年大阪ものづくりワールド」に出展しています。この記事では、名刺・会話の文字起こし・CRMをAIでつなぎ、初日分のお礼メールを翌朝までに下書きにした手順をお伝えします。会話の録音を使う場合の取り込み手順もあわせて紹介しますが、これは2日目以降の分に向けて用意したものです。送信は人が行います。反応(返信率やアポ率)はまだ集計していないため、この記事では手順と判断の基準に絞って書きます。

展示会のお礼メールは、いつまでに送ればいいですか?

当社は会期の前に、相手の温度感ごとに目安を決めました。

温度感相手の状態お礼の目安
A課題がはっきりしていて、3か月以内に検討。決裁に関わるか、紹介してもらえる当日中に個別のメール、翌営業日までに電話
B課題はあるが、時期は半年以内か情報収集の段階翌営業日までに個別のメール、1週間以内に連絡
C関心はあるが具体性が低いお礼と関連資料の送付、その後は定期的な案内へ

ポイントは、全員に同じ早さで同じ厚みのメールを送ろうとしないことです。それでも「翌営業日まで」に間に合わせるには、書く作業そのものを短くする必要がありました。初動の早さの考え方はSpeed to Leadの記事でも書いています。

以前の当社は、1通ずつ手で書いていた

2026年7月の西日本DX推進EXPOでは、お礼メールを相手ごとに1通ずつ書きました。ブースで話した内容に触れ、資料のURLと面談の候補日を添える形です。中身には手応えがありましたが、書く人の時間がそのまま上限になります。名刺が数十枚になる展示会では、同じやり方は続きません。

そこで10月の展示会では、「書く」をAIに、「決める」と「送る」を人に分けました。

全体の流れ:会期前・当日・翌朝

時点やること担当
会期前名刺の登録ルール、録音の扱い、温度感の基準を決める人
当日名刺を交換し、CRMに見込み客として登録する人
当日夜〜翌朝その日の名刺をCRMから書き出し、会話の要約と照合するAI・スクリプト
翌朝要約・温度感・触れる点・お礼メールの文案を埋めるAI
翌朝送る/送らない、電話に回す/回さないを選ぶ人
翌朝担当者のGmailに下書きを保存する。電話分は一覧に書き出すスクリプト
以降下書きを読み直して送る。電話をかける人

初日(10月7日)の名刺は31枚でした。翌朝には、20件のお礼メールが担当者のGmailに下書きとして入り、電話に回す14件の一覧ができていました。11件は「今回は送らない」と人が判断しています。

会期前に決めておくこと

当日の作業を軽くするために、次の4点を先に決めました。

  1. 名刺を登録するときの担当者:名刺を交換した人を、CRMの見込み客の担当者にする。あとで「誰の下書きにするか」をこれで決める
  2. 録音の締めの一言:会話を録音する場合は、最後に「今の話は〇〇株式会社の〇〇様」と吹き込む。録音と名刺を照合する手がかりになる
  3. 録音の同意と保存:録音する前に相手へ目的を伝えて同意を得る。主催者の決まりも確かめる。保存先・保存期間・削除の手順も決める
  4. 温度感の基準:上の表のA・B・Cを、ブースに立つ全員でそろえる

録音を使わない場合は、2と3の代わりに、交換直後に担当者が要点を数行メモする形でも回ります。

当日夜〜翌朝:名刺と会話をCRMで突き合わせる

名刺を1日分ずつ書き出す

その日の0時から翌日正午までにCRMに作られた見込み客を書き出します。Webの問い合わせや広告から来た見込み客は、流入情報(UTMなど)を見て除きます。名刺をデータ化してCRMに入れておけば、ここは自動でそろいます。

会話の要約を照合する

2日目以降の分は、録音機の文字起こしと要約がメールで届くようにし、それを取り込む手順を用意しました。スクリプトがそのメールを取り込み、締めの一言(社名と名前)を手がかりに、どの録音がどの名刺の方かの候補を出します。文字起こしでは社名が別の漢字に化けることがあるため、確定は候補一覧を見て行う設計です。初日分は、この取り込み手順を使う前の分です。

AIが8つの列を埋める

名刺の一覧に、AIが次の列を足します。

  • 名刺を交換した担当者
  • 会話の要約
  • 先方の状況・関心
  • 当日の約束(次のアクション)
  • 温度感(A・B・C)
  • お礼メールを送る順番
  • お礼メールで触れる点
  • 確認事項(聞き取りがあいまいだった点など)

初日分では、31件のうち26件に要約が入りました。要約はCRMの見込み客のメモにも1件ずつ書き込みます。やり直しても同じメモを更新するので、重複しません。会議・メール・電話の記録をCRMに自動で貯める考え方は、クローズドループ基盤の記事で詳しく書いています。

人が判断する場面:送るか、電話に回すか

判断は、社内で作った小さな画面で行います。名刺1枚ごとにカードが並び、要約と温度感を見ながら、2つを選びます。

  • お礼メール:送る/送らない
  • 電話:回す/回さない

「送る」を選ぶと、AIが書いた文案が開きます。面談の候補日は画面の上で1回入力すれば、全員の文案に入ります。温度感が高い相手ほど、当日の話を箇条書きで振り返る厚めの文面に、低い相手は短いお礼と相談の受付だけの文面にしています。見込み客の段階分けと文面の変え方は、S/A/B/Cの4段階で運用した記事もご覧ください。

下書きは担当者のGmailに入れる。送信は人

文案は、名刺を交換した担当者本人のGmailに下書きとして保存します。当社は2名がブースに立ったため、2つのGmailアカウントに振り分けています。

ここで気をつけたのが、アカウントの取り違えです。保存の前に、接続しているGmailの持ち主が、担当者のアドレスと一致しているかを照合します。一致しなければ保存しません。署名は各担当者のGmailの設定から取り、本文の末尾に付けます。同じ相手の文案を直して保存し直すと、新しい下書きを作らず、前の下書きを差し替えます(Google公式:Gmail APIの下書き)。

送信の機能は作っていません。担当者がGmailで下書きを開き、読み直して、自分で送ります。メール配信で同じ線を引いた理由は、メルマガ作成をAIに任せる範囲の記事に書いています。

文面の型(匿名化した例)

温度感が高い相手への文面は、次の形です。会社名と固有の話題は伏せています。

〇〇株式会社 〇〇様

株式会社etikaの〇〇です。 10月7日は2026年大阪ものづくりワールドの弊社ブースにお立ち寄りいただき、ありがとうございました。

(当日伺ったお話に1〜2文で触れる) 当日ご関心をお寄せいただいた点を、改めてまとめてお送りします。 ・(関心を持たれた点1) ・(関心を持たれた点2) ・(関心を持たれた点3)

もしよろしければ、御社のご状況に合わせて詳しくご案内するお時間(オンライン30分程度)をいただけますと幸いです。下記の日程でご都合のよい時間はございますでしょうか。

(候補日程)

上記以外の日程でも調整いたしますので、お気軽にお申し付けください。

温度感が低い相手は、当日の話に1文で触れ、「改めてお話をお聞きになりたいことがございましたら」と相談の受付だけを添えます。どちらも本文は300〜550字ほどです。

やってはいけない3つのこと

  1. 人と下書きの取り違え:録音と名刺の照合を機械任せにしない。担当者のアカウントを照合せずに保存しない
  2. 個人情報の扱いの甘さ:名刺の一覧や文字起こしを、共有フォルダや誰でも見られる場所に置かない。録音は同意を得てから
  3. 全員同じ文面:名刺の情報だけで書かせない。当日話した内容に触れる一文が、お礼メールの価値になる

送ったあとに何を記録すればいいですか?

お礼メールは送って終わりではありません。展示会の成果は、名刺の枚数ではなく、そこから何件の面談や商談が生まれたかで決まります。記録しておきたいのは、名刺1枚ごとの次の項目です。

  • お礼メールを送った日と担当者
  • 電話をかけた日と結果
  • 返信の有無と、次の約束
  • 対象外とした理由(同業・支援会社・情報収集のみなど)

この記録があると、次の展示会で「どの温度感の相手が面談につながったか」を振り返れます。温度感の基準そのものを見直す材料にもなります。当社の今回分は、まだ集計の途中です。

導入する前のチェックリスト

  • 名刺を登録するときに、交換した担当者が分かるようにしているか
  • 温度感の基準を、ブースに立つ全員でそろえたか
  • 録音する場合、同意の取り方・主催者の決まり・保存と削除の手順を決めたか
  • 送る/送らない、電話に回すかを、人が決める場面を残したか
  • 下書きは担当者本人のメールに入り、送信は本人が行う形になっているか
  • 送ったあとの返信・面談の数を記録する場所を決めたか

名刺交換のお礼メールをCRMの機能で自動送信する方法は、CRMサポートセンターの名刺交換時のお礼メール自動化の記事で紹介しています。当社の今回のやり方は、そこに「人が選んでから送る」工程を挟んだ形です。展示会で出会った見込み客を、お礼・架電・商談までの流れに乗せる仕組みづくりは、受注プロセス管理のページで紹介しています。

よくある質問

展示会のお礼メールはいつまでに送ればいいですか?

当社は会期前に、相手の温度感ごとに当日中〜翌営業日までと決めました。課題がはっきりしていて検討時期が近い相手には当日中〜翌営業日に個別のメールを送り、関心が薄い相手にはお礼と資料の案内にとどめます。相手が展示会の記憶を持っているうちに届くことを優先した基準です。

展示会のお礼メールをAIに書かせると、定型文っぽくなりませんか?

名刺の情報だけで書かせると、どうしても似た文面になります。当社は、ブースで話した内容の要約と「お礼メールで触れる点」をAIに先に整理させ、その点に1〜2文で触れる形にしています。人が下書きを読み、言い回しを直してから送ります。

会話を録音してよいのですか?

録音する場合は、始める前に相手へ目的を伝えて同意を得ることが前提です。会場によっては撮影や録音に決まりがあるため、主催者にも事前に確認してください。当社は、保存先・保存期間・削除の手順も会期前に決める項目にしています。

名刺の枚数が少なくても、この仕組みは要りますか?

10枚程度なら、手で書いても翌日中に終わることが多いです。仕組みが効いてくるのは、担当者が複数いて、名刺が数十枚になるときです。誰がどの相手に送るのか、送ったのかを一覧で追えることが、取りこぼしを防ぎます。

宮村佳祐

この記事の著者: 宮村 佳祐(株式会社etika 代表取締役)BtoBメディアとMAツール「リストファインダー」の立ち上げ・事業拡大を経て、ニッチな強みを持つBtoB中小企業の売れる仕組みづくりを支援。プロフィール詳細 →