リードソースとは、見込み客が「どのページから、どの経路でサイトに来たか」を示す流入元の情報です。リードソースの引き継ぎとは、この情報を見込み客・商談・受注の記録まで持ち運ぶことを指します。これができていないと、「この記事から来た問い合わせが、いくらの受注になったか」は分かりません。

GA4を正しく設定すれば、どのページで問い合わせが起きたかは分かります(GA4側の点検はGA4のキーイベントは正しく数えられているかで解説しています)。本記事はその先、GA4の外側の話です。問い合わせがCRMに入ってから受注になるまでの間で、流入元の情報がどこで途切れるのか。当社が製造業の支援で見つけた2つの断点と、それをつなぐ設計の手順をまとめます。

GA4やUTMパラメータだけでは、なぜ受注まで分からないのか?

GA4が得意なのは、流入元ごとの傾向をつかむことです。「検索から来た人が多い」「このページを見た人がよく問い合わせる」といったことは、GA4で十分に分かります。

一方で、次のことはGA4だけでは分かりません。

  • その問い合わせが、商談になったか
  • 商談が、受注したか失注したか
  • 受注した金額はいくらか、その後のリピートを含めていくらになったか

URLにUTMパラメータを付けても同じです。UTMはGA4上で訪問を見分ける目印にはなりますが、それだけでは受注の記録と結び付きません。これらはCRMや販売管理の記録にしかない情報です。つまり「Web集客の売上への貢献」を測るには、GA4の外で、問い合わせの1件1件に流入元を付け、それを受注まで運ぶ必要があります。

金属表面処理加工業で見つかった2つの断点

当社が支援している中小の金属表面処理加工業では、「Webからの問い合わせが、どれだけ売上につながっているのか知りたい」というご相談を受け、サイトとCRMのデータを突き合わせました。サイトのアクセスは計測できており、CRMにも問い合わせや商談の記録は入っていました。それでも、ページごとの受注金額は出せませんでした。データが2か所で切れていたためです。

断点場所起きていたこと
断点1サイト → 見込み客問い合わせフォームに流入元の項目がなく、入口のページも参照元も記録されていなかった
断点2商談 → 受注実績販売管理システムの受注明細を商談と同じ場所に取り込んでおり、本物の商談と受注実績がつながっていなかった

断点1:フォームが流入元を拾っていない

問い合わせフォームの項目は、会社名・氏名・メールアドレス・電話番号・問い合わせ内容などで、どのページから来た人かを示す項目はありませんでした。

流入元の情報が入っている見込み客もありました。サイトに入れていた訪問者追跡ツールが、メールアドレスなどで訪問者を特定できたときに、最初に見たページや参照元を書き込んでいたものです。ただ、そうした見込み客は全体の4分の1に満たない状態でした。残りの問い合わせは、流入元が空のまま入ってきます。

調べてみると、フォームはサイトのページに直接埋め込まれた形(iframeではない形)でした。これは良い知らせです。フォームに隠し項目を足し、ページ側のスクリプトで値を入れるだけで済むため、フォームを作り直す必要がありません。

断点2:受注実績が商談と混ざっている

商談の記録には、本物の商談のほかに、販売管理システムから取り込んだ受注明細が大量に入っていました。明細の伝票番号は独立した項目ではなく、商談名の文字列に伝票番号などを埋め込む形で入っていました。

この状態では、次のことが起きます。

  • 本物の商談と過去の受注明細が同じ一覧に混ざり、勝率や商談期間の数字が正しく出ない
  • ある商談を受注したあと、その取引先からどれだけのリピート受注があったかを追えない
  • 受注金額から、元の商談・見込み客・流入元へさかのぼれない

さらに、Webからの問い合わせで生まれた商談を見ると、元の見込み客にたどれるものが見当たりませんでした。見込み客からの「変換」の操作を通さず、商談を新しく起こしていた可能性があります。いずれにしても、見込み客と商談のつながりが切れていると、仮に見込み客に流入元が記録されていても、商談の段階で切れてしまいます。

リードソースを受注まで引き継ぐには、どう設計するか?(4段+受注実績)

つなぐ方法は、流入元の情報を4段で運び、最後に受注実績と結び付けることです。なお、この会社では本記事の執筆時点で、CRM側の設定(②のフォームの隠し項目、③④の項目と引き継ぎ)は済んでいますが、サイト側のスクリプト(①と②の値の書き込み)はまだ入っていません。以下は効果を確かめた手順ではなく、設計と、設定してみて分かったことです。

① 取得(サイト)→ ② フォームの隠し項目 → ③ 見込み客の項目 → ④ 商談へ引き継ぎ → 受注実績と結び付け

① サイトで流入元を取得して保存する

サイトの全ページに小さなスクリプトを置き、初めて来たときの情報をブラウザに保存します。取得するのは次の項目です。

項目中身広告がなくても値が入るか
入口のページ最初に着地したページのURL入る
最初の参照元どのサイトから来たか(検索エンジン、掲載媒体、AIの回答画面など)入る
フォームを送ったページ実際に問い合わせをしたページのURL入る
GAのクライアントIDGA4の訪問データとCRMの記録を突き合わせるための番号入る
初回の着地時刻最初に来た日時入る
UTM(5項目)URLに付けた目印(参照元・媒体・キャンペーン名など)目印を付けた施策だけ
広告のクリックID広告から来たときに付く番号広告を出したときだけ

ポイントは、最初に来たときの値を上書きしないことです。1回目は検索から記事に来て、数日後に社名で検索して問い合わせた、という人は珍しくありません。後の訪問で上書きすると、問い合わせのきっかけになった記事が記録から消えます。最初の入口と、実際に送ったページの両方を残しておくと、「入口になった記事」と「背中を押したページ」を分けて見られます。

② フォームに隠し項目を足し、送信前に値を入れる

問い合わせフォームに、画面には表示されない項目(隠し項目)を足します。送信ボタンが押される直前に、①で保存した値をスクリプトで入れます。お客様の入力の手間は増えません。

フォームが複数あるなら、すべてに同じ項目を足します。この会社でも、問い合わせ・申込・資料ダウンロードと、目的の違うフォームが複数ありました。資料ダウンロードのように、検討の早い段階の人が使うフォームほど、どの記事から来たかを知る価値があります。

③ 見込み客に、流入元の項目を作る

CRMの見込み客に、流入元を入れる項目をまとめて作り、フォームの隠し項目と対応付けます。この会社では「流入元情報」というまとまりを作り、十数項目を入れました。

④ 商談にも同じ項目を作り、変換で引き継ぐ

ここが最も大切な段です。見込み客と同じ項目を商談にも作り、見込み客から商談へ変換するときに自動で写る設定をします。 これをしないと、せっかく見込み客に記録した流入元が商談で途切れ、「ページ別の受注金額」は永遠に出せません。

当社が設定したCRMでは、変換で写せるのは「項目の種類と文字数の上限が一致している項目」だけでした。見込み客と商談で、項目の名前・種類・長さを最初から揃えておくと、設定も確認も楽になります。

あわせて、商談は必ず見込み客からの変換で作る運用に揃えます。商談を新しく起こすと、引き継ぎの設定は働きません。当社が設定したCRMでは、一覧からまとめて変換した場合にも引き継ぎの設定が反映されない仕様でした。社内への周知が要る点です。

受注実績を、商談とは別の台帳にする

断点2は、受注明細を商談から切り離し、「受注実績」という別の台帳に移すことで直します。

  • 受注実績には、伝票番号・連番・品番を独立した項目として持たせる(商談名の文字列から取り出して移す)
  • 受注実績は、販売管理システムの取引先コードで取引先に必ず結び付ける
  • 受注した商談とは、分かる範囲で人が結び付ける。1つの商談から複数のリピート受注が生まれる「1対多」の形にする
  • 毎月の取り込みは、伝票番号と連番の組み合わせを一意の目印にして、二重に取り込まないようにする

すべての受注を商談に結び付ける必要はありません。昔からの取引先のリピートは、取引先に結び付いていれば十分です。Webの貢献を見たいのは、Webから来た見込み客が商談になり、受注したものだけだからです。

UTMパラメータは、広告を出していなくても必要か?

UTMパラメータとは、URLの末尾に付けて流入元を見分けるための目印です。「UTMは広告のためのもの」と思われがちです。この会社も広告は出しておらず、サイトへの流入のほとんどは検索と直接の訪問でした。それでも、この仕組みを入れる価値は十分にあります。整理すると、取得する項目は次の3つに分かれます。

  1. 本命(広告の有無に関係なく値が入る):入口のページ、最初の参照元、フォームを送ったページ、GAのクライアントID。目印を1つも付けなくても値が入り、「どのページが受注を生んだか」が分かります。技術記事やFAQにどれだけ力を入れるか、というコンテンツへの投資判断に直結します。参照元からは、業界の掲載媒体や、AIの回答画面から来た問い合わせも見分けられます
  2. 仕込み(広告以外の施策で効く):UTM。展示会のQRコード、名刺、メール配信、取引先からの紹介リンクにUTMを付けておけば、それぞれから来た問い合わせの受注までを追えます
  3. 将来の枠(広告を始めるまで空):広告のクリックIDなど。取得の処理は同じなので、後から追加で依頼するより、先に枠を作っておくほうが手間がかかりません

設定で当社がつまずいた点

実際に項目とフォームを設定したとき、いくつか想定外のことがありました。CRMの製品によって細部は違いますが、同じ設計をするときの参考になるはずです。

  • URLの項目は、URL型ではなく文字列型にした:参照元には、アプリから来た場合など、URLの形をしていない値が入ることがあります。URL型にしておくと、その値でフォームの送信自体が失敗するおそれがあります。文字列型にして、送信側で長さの上限に切り詰めます
  • 着地時刻は、日時型ではなく文字列型にした:当社が設定したCRMのフォームでは、日時型の項目を隠し項目にできませんでした。日時は「2026-01-01T09:00:00+09:00」のような文字列で入れています
  • 一度消した項目名は、すぐには使い直せなかった:作り直そうとして項目を消すと、同じ名前が予約されたまま残り、別の名前を付けるしかありませんでした。項目名は最初に決めてから作るのが安全です
  • 隠し項目には初期値が要った:当社が設定したCRMのフォームでは、初期値が空だと保存できず、「-」を入れました。サイト側の準備が終わるまでは、すべての問い合わせに「-」が記録されます。逆に言えば、「-」が入っている問い合わせは「サイト側の仕組みがまだ動いていない」目印として使えます

項目の追加やフォームの変更は、本番の前に検証用の環境で試し、テストの送信で既存のフォームが今まで通り動くことを確かめてください。

前向きに積み上げるもの、と割り切る

流入元は、訪問したその場で記録しない限り残りません。仕組みを入れる前の問い合わせや受注には、さかのぼって付けられません。この設計は、仕組みを入れた日から先に入ってくる問い合わせについて、前向きにデータを積み上げていくものです。

数か月たつと、次のようなことが数字で見えるようになります。

  • どのページから来た問い合わせが商談になり、いくらで受注したか
  • 検索、掲載媒体、展示会、資料ダウンロードのうち、どれが「受注になる商談」を生んでいるか
  • 新しい取引先を連れてくるページと、リピートの多い取引先につながる入口の違い

「アクセスは多いのに受注を生まないページ」と「アクセスは少ないのに受注につながるページ」が別物だと分かると、記事を増やす場所も、手を入れる場所も変わります。

仕組みが通ったかを確かめる4項目

最後に、設定が終わったときに確かめる項目です。

  1. UTMを付けたURLから来てテスト送信すると、新しい見込み客に、入口のページ・参照元・UTM・GAのクライアントIDが実際の値で入っている
  2. その見込み客を変換すると、商談に同じ値が自動で写っている
  3. 受注した商談に、受注実績が結び付いていて、金額を合計できる
  4. GA4側で、問い合わせのキーイベントがフォームの送信成功時にだけ記録され、社内のツールからの参照が除外されている

4つ目はGA4側の点検です。手順はGA4のキーイベントは正しく数えられているかを参照してください。CRMの項目は、人が入力するものを最小限に絞るのが原則です。流入元の項目は、人が入力しなくても勝手に入る項目なので、入力の負担を増やさずに持てる情報です。

自社のサイトで問い合わせがどこまで計測できているか、どこでデータが切れていそうかは、BtoB Webサイト AI対応無料診断で確認できます。問い合わせから受注までの記録の設計は、当社の受注プロセス管理が扱う領域です。計測タグから流入元のCRMへの引き継ぎまでを先に整えたい場合は、マーケ担当AIエージェント ライト(GA4・流入元の計測プラン)でお引き受けしています。

よくある質問

GA4の問い合わせ数が正しく取れていれば、CRMとつながなくてもよいのでは?

GA4で分かるのは「どのページで、何件の問い合わせが起きたか」までです。その問い合わせが商談になったか、いくらで受注したかは、CRM側の記録にしかありません。GA4は流入の傾向をつかむ道具、CRMは1件ごとの受注までを追う道具と分けて考え、両方をつなぐのが確実です。GA4側の点検手順は「GA4のキーイベントは正しく数えられているか」の記事でまとめています。

UTMパラメータとは何ですか?広告を出していなくても必要ですか?

UTMは、URLの末尾に付けて「どこから来た訪問か」を記録するための目印です(例:?utm_source=expo)。広告を出していなくても、展示会のQRコード、名刺、メール配信、取引先からの紹介リンクに付けておけば、その施策から来た問い合わせを見分けられます。ただし、検索から来た人にはUTMが付かないため、入口のページと参照元を記録する仕組みのほうが先です。

過去の問い合わせや受注にも、流入元をさかのぼって付けられますか?

基本的にはできません。流入元は、訪問した時点で記録しておかないと残らない情報だからです。仕組みを整えた日から先に入ってくる問い合わせについて、前向きに積み上げていくものと割り切ってください。

訪問者を追跡するツールを入れているので、流入元は取れているはずです。

ツールが流入元を見込み客に結び付けられるのは、多くの場合、メールアドレスなどで訪問者を特定できたときに限られます。当社が見た例では、流入元が入っている見込み客は全体の4分の1に満たない状態でした。フォーム自体に流入元の項目を持たせると、送信されたすべての問い合わせに記録が残ります。

流入元の情報を集めることに、個人情報の面で問題はありませんか?

取得・保存はプライバシーポリシーとCookieの同意の範囲で行ってください。入口のページや参照元を問い合わせ内容と一緒に記録する場合は、その旨がポリシーに書かれているかを事前に確かめ、必要なら書き足しておくことをおすすめします。

宮村佳祐

この記事の著者: 宮村 佳祐(株式会社etika 代表取締役)BtoBメディアとMAツール「リストファインダー」の立ち上げ・事業拡大を経て、ニッチな強みを持つBtoB中小企業の売れる仕組みづくりを支援。プロフィール詳細 →